その時に交わした言葉はこれだけ。
トイレで鉢合わせ、ヒゲソーリーと冗談を言ったなどというのは、誰でもすぐに忘れてしまうような些細な出来事ですよね。
ところが、それから間もなくしてあったクリスマスイブの社内パーティーで、おばちゃんは突然パーティーに参加するようにと内線電話で呼ばれたそうです。
しかし、仕事中であったおばちゃんは、「他の掃除のおばちゃんたちもいるから行けません」と断ったそうです。
するとしばらくしてから再度内線がかかってきました。
「おばちゃんたち全員、参加してください。ビル・ゲイツ社長からの直々の依頼です。」
というのでした。
やむなくおばちゃんは当日出社していたおばちゃんたち全員を集め、みんなでパーティー会場に足を運ぶことに。
もちろん、オシャレなんてしていません。
普段の作業着のままで会場へ。
恐々と会場に入っていくと、そこにはたくさんの社員たちがいました。
そこには当然、ビル・ゲイツさんも。
普通の社員であれば、ビル・ゲイツさんと直接会話なんてできません。
しかし、ビル・ゲイツさんはおばちゃんを見つけると、とても嬉しそうな顔をして、
よく来てくれました!
と言い、抱きかかえんばかりに歓迎をしたそうです、
そして、社員一同に、このおばちゃんはすごい日本人で、僕が大好きな人です!と紹介しました。
一緒にいた他の掃除のおばちゃんたちも同じように歓迎するビル・ゲイツの姿に、周りの社員たちは本気でおばちゃんたちを尊敬し、親しみを込めていることが伝わってきたそうです。
掃除のおばちゃんというのは、世間から見ると会社の中の主役ではありません。
トイレで出会っても、廊下ですれ違っても、その存在を意識していない人もいるかもしれません。
しかし、ビル・ゲイツさんは、どんなに辛い仕事であっても何十年その仕事を誠実に行い、しかも「ヒゲソーリー」というユーモアとウィットを忘れず、堂々と自らの仕事に精を出す彼女の姿勢、本来の日本人の典型を見出したのかもしれません。
日本が大好きなビル・ゲイツさんは、彼女が誠実に毎日の清掃をしていること、自分の仕事に誇りを持って生きていること、そして彼女が胸を張って堂々と生きていることを瞬間に見抜いたのだと思います。
世界を知る大人物のビル・ゲイツが、日本でただひとりの信頼できる友人とまで称したこのおばちゃん。
同じ歳の旦那さんはある会社の経理をしていて、定年後もその手腕を買われて会社に残り、高給をとっておられるそうです。
つまり、彼女は、別に働かなくたって、十分飯を食って生けれるだけの収入があるのだとか。
しかし、彼女はこのように語ったそうです。
「働かないと体がなまるし、働くことで毎日人のお役に立てれることがとっても嬉しいのです。」
自分の体を気にしながらも、他者のために尽くすという精神に喜びを感じる彼女の姿に尊敬してしまいます。
このようなキレイな心を持つ女性の姿を、私たちは見習わなければなりませんね。
Writing by S.Shingo of cadot
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