冷静かつ俊敏に、高度な判断を下す能力も。
走者をホームへ回すときは、腕が抜けてしまうのではないかと思えるほど思い切りグルグル回す。
止めるときは走者の視界に入りやすいよう地面に膝をつき、腕を差し出す。
回すか回さないかの判断も冷静沈着だ。
9日の智弁和歌山戦、6回2死二塁の場面でセンター前ヒットが出たときは、際どいタイミングだったが、思い切って腕を回した。
「センターの選手はスイングを見ていても、気持ちが昂ぶりやすいタイプだと思った。だから、いざとなったら、(中継を使わずに)1人で投げたがると思った」
その読みは当たった。
センターはノーバウンドで捕手に返球しようとし、大暴投。3-2となる勝ち越し打を演出した。
「よっしゃ、って思いましたね」
プレーだけでなく、審判への礼儀もわきまえる。
一塁コーチャーの東は、声だけでなく、体でもメッセージを発する。
二塁に走者が出ると、ショート、セカンド、バッテリーのマークが甘いときは、ぴょんぴょん飛び跳ねる。走者はそれを見て、リードを大きく取れるわけだ。
ただし、あまりにも激しく動くので、審判から「あまり動かないように」と注意を受けることもある。
そのための対策も練っている。
東が言う。
「審判の方には、必ず『よろしくお願いします』ってあいさつをして、頻繁に話しかけるようにしています。『熱中症に気をつけてください』とか、ルールでわからないことがあったら質問してみたり。そうして親近感を持ってもらえるようになれば、多少、大目に見てくれるかなと思って」
何とも頼もしいコーチャーたちである。
津商の攻撃中は、打席と、一、三塁のコーチャーズボックスと、三方向から攻めているような印象を受けた。