一か月後、海岸に行くとウェンディの姿はありません。
前回のことを思い出して、私は恥ずかしくなった。
彼女に謝りたかった。
私は自分が彼女に会いたがっていることに気がついた。
意を決して、小屋が並ぶ方に歩きます。
ドアをノックすると、蜂蜜のような色の髪をした大人しそうな女の人が出てきた。
「こんにちは、突然ごめんなさい。私、ルース・ピーターソンっていいます。
今日、あなたの娘さんを海岸で見かけなかったものだから、気になって。」
「ピーターソンさん!どうぞ入って。
あなたのことはウェンディから聞いていたわ。彼女の相手をしてくれてありがとう。
迷惑じゃなかったらよかったんだけど。もうそうだったなら謝るわ。ごめんなさい」
「とんでもない。ウェンディはとてもいい子だもの」
それが私の本心だということに気がついた。
「今、ウェンディはどこに?」
「…ウェンディは、先週亡くなったの。白血病だった。あなたには何も言わなかったのかもしれない」
私は近くにあった椅子に掴まらなくてはならなかった。
視界が揺らぎ、息ができなくなりました。
「ウェンディはこの海岸がとても気に入っていたの。ここに住みたいって言い出して…
でも、ここに来てから見違えるように明るくなった。彼女の言う『楽しい日』を沢山過ごせたんだと思う。
最後の数週間は、衰弱が激しくて…」
母親は何かを思いだして、言葉に詰まった。
「あなたに渡さなければならないものをウェンディから預かってるの。少し待ってて、探してくるから。」
私は黙ってうなずいた。
この若い母親に何かを言わなくではならないと思って必死に言葉を探したけど、何も出てこなかった。
私はウェンディの母親からシミの付いた封筒を受け取ります。
太い、子供っぽい字で「Pさんへ」と書かれた封筒には、1枚の絵が入っていました。
そこには色鮮やかなクレヨンで、黄色いビーチ、青い空、そして茶色い鳥が描かれています。
絵の下にはこう書かれていた。
「シギが あなたに よろこびを はこんできますように」
その瞬間、心の中を何かが弾けたのです。
涙が溢れ止まらなくなってしまったのです。
私は思わずウェンディの母親を強く抱きしめてしまった。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
何度もそう繰り返した。
私たちは抱き合ったまま長いこと泣いていた。
ウェンディの絵は今、額に入れられて私の書斎に飾られています。
私は6歳という短い生涯を閉じた少女に愛を教わった。
この絵を見て私はいつも海色の目をした砂色の髪の少女と、勇気、そして無償の愛について考えます。
できるならまた最後会った日に戻って、ちゃんとさようならを言いたい。
それがウェンディにとっても必要ではないことだと、分かっているけれど・・・。
いかがでしたか?
時に私たちは自分に捕らわれすぎるあまり、相手の苦しみに気づくことができないときがあります。
ウェンディはどんなに苦しくても精一杯楽しむことを忘れず、人に優しくすることの大切さを教えてくれました。
まっすぐで純情な子供から教わることはたくさんあります。
どんなときでも相手を優しく思うことを忘れてはいけませんね。
Writing by S.Shingo of cadot
出典:hefty
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