それは正確に体重を測ってみましょうか・・と盲導犬の補助器具を
全て外した時の事でした。
彼は一目散に病院を駆け巡りました。
そして、病院内の看護士、獣医一人ひとりに挨拶をするように
じゃれて、グルグル回って、伏せをしたと思いきや飛び掛ってきて、
また次の人間のところへ・・・
そう、これが彼の本当の姿だったのです。
本当は人間と一緒に思い切り遊びたくて、走り回りたくて、普通の犬としての暮らしに憧れを持っていた。
そんな彼に与えられた使命、盲導犬。
長い間、ずっと抑えていた感情だったのでしょう。
そんな彼を露にした原因、それは・・・
間違いなく、彼に付けられていた補助器具でしょう。
それを付けている間、彼は「プロ」なのです。
何があっても、飼い主さんを守り、自分の使命を果たさなければなりません。
どんなに立派な盲導犬だって、本当はもっと自由に走り回りたい。
どんなにおとなしい盲導犬だって、本当はもっと飼い主とじゃれあいたい。
そんな本能を全て押し殺し、ただただ愚直に、与えられた使命・・・目が不自由な飼い主を助ける事に一生を注ぐその姿を見たこの獣医は、強く強く感銘を受けたそうです。
決して、”素質”があるから盲導犬をやっているのではありません。
プロとして、自分の人生を犠牲にしてまで、飼い主を支える役目を遂げようと頑張っています。
これから盲導犬に会う事があったら、少しだけそんな事を思い出して、敬意を持ってあげるといいかもしれませんね。
Writing by Yuki Kato of cadot
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