「並んでるんだけけど」
と、嫌な顔をしながら割り込む親子に向けていった女性の、二人前にいる女性。
その女性が、割り込む親子を見て、突然大きな声で列の人々に声を掛けたのでした。
「すみません、この子供、すごく体調が悪そうです。」
「みなさん、列を譲ってあげてください!」
突然の女性の声に、列のみんなが親子の方を向きます。
すると確かに、子供の顔は強張っており、体調を悪そうにしているのでした。
「子供さんの体調が悪そうなので」
「先にトイレに行かせてあげてください」
すみません、としか言えていなかった親子に変わって、人々に声をかける女性。
すると、周囲の人々が、その親子に向かって「どうぞ」と、皆列を譲ったのです。
最初は、その親子に向かって、迷惑そうな声を挙げる女性のみでした。
しかし、「列を譲ってあげてください」と女性が声をあげた瞬間、周囲の人が列を譲るのです、
そうして、体調が悪そうな子供を抱えた親子は、皆に列を譲ってもらいながら、優先的にトイレに向かっていったのでした。
しばらくして、トイレから出てきた親子は、列に並んでいた人に向かって
「すみません、本当に助かりました」
と声をかけて言ったのです。