『お母さん、ぼくがいるよ』病気で味覚を失った母。”手作りが無くなる危機”を救ったのは息子からの”ある言葉”でした

2015.10.10 topics

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「では、ぶりの照り焼きに挑戦してみようか」お母さんが言った。
ぶりの照り焼きは家族の好物だ。フライパンで皮がパリッとするまでぶりを焼く。その後、レシピ通りに作ったタレを混ぜる。
そこまではお母さんの仕事。タレを煮詰めて家族が好きな味に仕上げるのがぼくの仕事。
だいぶ照りが出てきたところでタレの味を確かめる。
 

 
「いつもの味だ。」ぼくがそう言うと久しぶりにお母さんに笑顔が戻った。
 

 
その日からお母さんとぼくの共同作業が始まった。お父さんも時々加わった。
ぼくは朝、一時間早起きをして一緒に食事を作るようになった。
 
お母さんは家族をあまり頼りにしないで一人でなんでもやってしまう。
でもね、お母さん、ぼくがいるよ。ぼくはお母さんが思っているよりもずっとしっかりし
ている。
 

 
だから、ぼくにもっと頼ってもいいよ。ぼくがいるよ。
 

 
いつか、お母さんの病気が治ることを祈りながら心の中でそうくり返した。

 
日本語を綴る文章力の素晴らしさもそうですが、小学4年生の男の子である、「森田悠生」くんのお母さんへの愛情の深さにとても感動しました。
 
闘病生活の末、変わってしまった母親に対し、負の感情ではなく、愛情で迎え入れる森田悠生くんはとても母親想いで素晴らしいですね。
 
森田悠生くんの綴るこの作文、現代社会で薄れてきた『想いやり』についてハッと考えさせられる、そんな心を打たれる作文をご紹介しました。

 


Writing by S.Shingo of cadot


出典:日本語検定委員会


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