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ピンクのカツラをかぶり、パツパツのピンクの衣装に、色がついたサングラスを頭に引っ掛けて馬鹿騒ぎをする男性。
その人は、僕の会社の直属の上司だったのです。
 
総合商社で働いているのですが、その上司は先輩社員の中でも取り分け厳しい人。
とても仕事ができるのですが、曲がったことが大嫌いで、報告が少し遅れたり仕事に漏れがあったりすると、本当に冷酷なほど静かにその責任を問うような方なのでした。
でも、とてもカッコよく、社内でも人望が厚い方で、僕も仲良くしていただいている上司でした。
 
ジーっとこっちを見る視線に気づき、馬鹿騒ぎしているピンク野郎が上司であることに気付いてしまった僕。
一度、目線をずらします。
すると向こうは、僕が気づかなかったと思ったのか、少し場所を移動し、角度を変えて顔が正面から目ない位置に移動したのでした。
 
そんな努力をよそ目に、僕は彼女に相談。
「あのピンクの人上司だったんだけど、どうしよう?」と聞くと、彼女はケロッと
 
「あ、そーなんだ!挨拶してくればいいじゃん!」
 
とサラリととんでもないことを言います。
 
ちらっとピンクの方に目を向けると・・・
僕が気付いていないと安心したからか、また立ち上がってお酒を飲んでは、いろんな人にお酒を煽っていました。
 
そして再び、ジーーーッと視線を送ってみることに。
すると立ち上がりながら飲んでいた上司の動きがピタっと止まり、そぉーーーっとこっちを見てくるのです。
 
やっぱり、僕が気付いているか気付いていないかが心配なのでしょうか。
大丈夫です、ばっちり気付いています。
 
「やっぱり、声かけよう」
 
そう彼女に伝え、上司の声を掛けてから去ろうと決めます。
正直その時、いつも厳格な姿勢で仕事に向き合っている上司がこんな風に馬鹿騒ぎをしているのを見て、ちょっと一言言ってやりたいなという気持ちがありました。
それと同時に、「実際に声をかけたら、どんな反応をするのだろう」ということにも、興味があったのは事実です。
 
そしてまたピンクの仮装をした上司は席を移動。
顔が見えないようにというのを狙ってか、僕たちに近いけれども、顔が反対側を向いている席に移動してきます。
その距離は、ちょっと立ち上がり、手を伸ばせば届きそうな距離にまできていました。
 
「よし!」と思い、先輩付近が落ち着いたタイミングを見て、スッとその場を立ち、後ろから先輩の方をトントンと叩きます。
 
女の子からのトントンだと思ったのでしょうか。
ものすごい笑顔で振り向いて、僕の顔を見た瞬間、この世の終わりのような顔に変化します。
 
「あ・・・・」
 

言葉を失う程驚かせてしまったことに、少し申し訳ない気持ちになりながらも、一言しゃべります。
 
「お疲れ様です」
「先輩も花見やってらしたんですね」
「いつにない感じでとっても楽しそうで何よりです」

 
普段は怖いけど、この日は全く怖くないから不思議。
そらそうです、だってピンクのパンチパーマのカツラかぶってる程に無防備ですから。
 
「お、お前も花見か?」
「ちょっと今日はこういう趣旨だからあれだけど、お前も花見楽しめよ」

 
一人だけコスプレしているのに趣旨も何もわからないとは思いましたが、「はい」と返答をし、そして一言伝えました。
 
「それと、さっきからボールが飛んできたり、他の人の所に転んだり、あんまりマナー良くないと思います」
「他の利用者の方もいるんで、声のトーンとか含め、迷惑にならないように気をつけたほうがいいですよ」

 
言うことを言ってしまい、ちょっとやばいかなと心配する僕。
そうしたら、上司から、こう返答されたのでした。
 
「すまん、ちょっとハメ外しすぎた」
「他の人に迷惑をかけないよう気をつける」
「気づかせてくれてありがとう」

 
わかってくれたならいいや!と思い、その場から去ろうとする僕たち。
すると最後に上司が、僕の名前を呼びとめます。
 
振り返ると、相変わらずピンクのカツラを被った上司が真顔で、僕に言いました。
 
「どんなに仕事が大変でも、ハメは外しすぎるなよ」
「何があるかわからないし、お前のためにもな」

 
まさに「何があるかわからない」中、とんでもないことが身に起きてしまった上司。
その風貌の説得力はすごいもので、僕も「はい、わかりました」としか言えませんでした。
 
そうやって、上司のとんでもない姿を花見で見てしまった僕。
心なしか、僕に優しくなったように感じます(笑)
 
花見シーズン、楽しい思い出がたくさんできると思いますが、やっぱり何事もマナーが大事!
節度ある範囲で楽しむ様にしましょうね☆
 


Writing by Takayuki Machida


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